成人式は人生の中でもビッグイベントのひとつで、大切な節目のときです。
日本では成人の日には大きな式典が開かれ、女性は振袖、男性は袴やスーツなどの正装をして参加することが一般的ですが、
世界では、日本の成人式のような式典を行う国は珍しく、成人式は日本独自のものと言っても過言ではありません。
では、海外では成人になったことををどのようにお祝いするのでしょうか?
世界の国の中には、成人を「大人になるため」の試練や通過儀礼で迎えるところと、「大人になったこと」をお祝いするところとに分かれます。
成人式を行わない国もたくさんありますが、過酷な通過儀礼は度胸試しや勇気をもつこと、
そして子どもから大人になることへの自覚と、大人の責任の重さを改めて感じさせる役割をもっているようです。
この記事では、ちょっと気になる世界の成人式事情について紹介します。
目次
世界では何歳で成人?
世界では「18歳で成人」とされる国が多く、世界の成人年齢は18歳が一般的と言えるでしょう。
ですが、性別や州によって成人年齢が異なるところもあります。
日本では2022年の4月1日から18歳で成人に変わりましたが、これには世界の成人年齢に合わせる目的もあったようです。
それでは、国や地域によって異なる、成人と定められる年齢を見ていきましょう。
9歳 :イラン(女性)
14歳 :プエルトリコ、ハイチ
15歳 :イラン(男性)、イエメン、サウジアラビア
16歳 :ネパール、キルギス、スコットランド
17歳 :北朝鮮、タジキスタン
18歳 :日本、オーストラリア、ドイツ、オランダ、フランス、スイス、ノルウェー、インド、メキシコ、イギリス、中国、アメリカ(州によって異なる)、カナダ(州によって異なる)他多数
19歳 :韓国、アルジェリア
20歳 :ニュージーランド、タイ、台湾、モロッコ
21歳:アラブ首長国連邦、インドネシア、エジプト、シンガポール、南アフリカ
国によって考え方が大きく異なることが分かりますね。
今まで20歳で成人としていた日本は遅い方だったようです。
世界の成人式とは?
成人と認められる年齢と同じように、成人についての考え方や行われる儀式も国によって違います。
それでは、世界で成人を迎えるにあたって、どのようにお祝いされているのか見てみましょう。
世界の成人式 アメリカの成人とは
アメリカの成人年齢は18歳ですが、州によっては19歳や21歳と定められているところもあります。
選挙権と喫煙は18歳、飲酒は21歳からですが、車の運転免許の取得は州によって異なる場合もあります。
アメリカでは、成人のお祝いとして16歳の誕生日にパーティーが開かれます。
法律上では18歳で成人となるアメリカですが、16歳という年齢は大人として扱われる年齢で、
女の子が大人の階段を登り、成人女性の仲間入りをする節目の年齢であると考えられてきました。
昔は、若くして結婚する人が多かったため、女性が結婚を意識し始める16歳を成人になる特別な年齢としてきたそうです。
16歳の誕生日はSweet sixteen(スウィートシックスティーン)と呼ばれ、少し裕福な中流階級のご家庭の
ご両親がお嬢様をお祝いするもので、アメリカの女の子にとって特別で伝統的なイベントです。
アメリカの誕生日パーティーは、子どもが小さいときからお友達を招待して、おうちにピエロを呼んだり、遊園地を貸し切ったりして盛大に開催されます。
Sweet sixteenは、親が子どもに開いてあげる誕生日パーティーの集大成と言えるでしょう。
パーティーの内容は特に決まっているわけではなく、リッチなホテルの会場を貸し切ってドレスコードを決めて
パーティーを行ったり、子どもの好きなセレブを呼んだりと、趣向を凝らして行われます。
アメリカでは16歳で車の運転免許をとれるので、親が車をプレゼントすることもあるそうです。
このSweet sixteenの伝統は現在でも続いていますが、結婚する平均年齢が上がっていることもあり、
近年では「成人女性の仲間入り」という昔からのお祝いの意味合いとは変化してきています。
また、女の子に比べると一般的ではないものの、最近では男の子の16歳の誕生日もお祝いするようになってきています。
世界の成人式 イギリスの成人とは
イギリスの成人年齢は18歳で、飲酒・喫煙と、選挙権が与えられるのは18歳からです。
イギリスでは成人のお祝いとして、成人を迎える18歳と、1969年までは成人とされていた21歳の誕生日とにパーティーをします。
18歳か21歳のどちらかで、両親から鍵のネックレスチャームや鍵のマークのカードなどをプレゼントしてもらうことが一般的です。
これには、「ここからはあなたの人生だから何時に帰ってきても良いし、どこで何をしていても良い」という
親から自立したひとりの大人としての権利と、自己責任の象徴の意味が込められていると言われています。
また、イギリスでは18歳未満の花火の購入は禁止されているため、18歳になったお祝いに花火をあげる文化があります。
世界の成人式 オーストラリアの成人とは
オーストラリアの成人年齢は18歳で、飲酒・喫煙・タトゥーができるようになり、選挙権が与えられます。
オーストラリアでは、成人のお祝いとして21歳の誕生日に21st(トゥエンティファースト)と呼ばれるパーティーが行われます。
21歳の誕生日をお祝いする理由は、1973年まではオーストラリアの成人年齢が21歳だったことに関係があります。
この頃、世界はベトナム戦争禍で、選挙権のない少年を戦争に行かせるのは不公平なのではないかという
国民の声を受け、選挙権を21歳から18歳に引き下げたため、成人年齢も合わせて変わりました。
昔の名残で、今現在も21歳をお祝いするようです。
21stは、おうちやビーチ、公園、カフェや近くの文化センターのような会場で行われることが多く、50人以上集まるのが一般的です。
夜から始まるこのパーティーは、軽食が振舞われ、結婚式さながらの友人・親戚と本人のスピーチや
ダンスタイムなどがあり、希望者はクラブへ移動してさらに踊り、帰りは朝方になることもあります。
プレゼントを渡すときに欠かせないのがメッセージカードです。
人と人とのつながりを大切にするオーストラリア人にとって、手書きのメッセージカードで気持ちを伝えることはとても大切だと考えられています。
世界の成人式 メキシコの成人とは
メキシコの成人年齢は男女で異なり、男性は18歳、女性は15歳です。
飲酒・喫煙・車の運転免許の取得は18歳からとされています。
成人のお祝いとして、ラテンアメリカの多くの国では上流階級の女子の15歳の誕生日に豪華なパーティーが行われます。
フィエスタデキンセアニェーラと呼ばれる伝統的なもので、メキシコでは女の子を妊娠したと分かった時から、この誕生日パーティーに向けて貯金を始めます。
パーティーが終わると、社会的責任を果たせる準備ができている成熟した大人としてみなされます。
フィエスタデキンセアニェーラでは、女の子はプリンセスのようなドレスアップをして特別なダンスを踊ります。
主役の女の子はこの日のために同年代の男の子を何人か選んでおき、この男の子たちがバックダンサー兼ダンスパートナーとなります。
そのほかにも生バンドによる演奏や、父親とのダンス、ケーキの入刀やスピーチ、大人になる前の
最後のおもちゃをもらうなど、結婚式よりも盛大なダンスパーティーになることもあるそうです。
メキシコの女の子は小さな頃からこのパーティーに憧れ、楽しみに育ちます。
世界の成人式 ネパールの成人式とは
ネパールでは成人年齢は16歳とされていますが、厳密には決まっていません。
民族やカーストによっても異なりますが、一般的には成人のお祝いとして男子にのみバルタマンという儀式が行われます。
これは、ヒンドゥー教の「生命をもって再生する」という教えに根差した伝統的な儀式です。
儀式を行う時期は、誕生日と成人式に良いとされる日を占いによって決めるため、子どものときに受ける人もいれば、大人になってから受ける人もいるようです。
大体、5~20歳くらいまでの間にこの儀式を迎えます。
バルタマンの内容は、頭頂部の髪の毛を一筋残して剃り、聖水をかけ、行者の服に着替え、
神仏とつながる印である聖紐をもらい、マントラという真言を授けられるというものです。
そのあと、外に出てお布施をもらい、家に戻って儀式が終わります。
自宅に親戚や友人を招いてみんなの前で行われ、招待客からは贈り物がもらえるようになっています。
儀式を終えると成人と見なされ結婚ができるようになり、家族の重要な儀式に参加できるようにもなります。
世界の成人式 中国の成人とは
中国での成人の年齢は18歳で、18歳になると車の運転免許を取得できたり、選挙権が与えられたりします。
日本では成人になると同時に飲酒と喫煙が認められますが、中国では年齢制限がないそうです。
18歳での成人は高校三年生にあたるため、受験勉強が大変な中国では、受験シーズンに自ら進んで成人式に
参加したいという人はあまり多くないようで、日本のように大人数で集まってではなく、学校ごとに行事をします。
イベントで行われるのは
・国歌斉唱
・国旗掲揚
・主席からのメッセージの読み上げ
・保護者からの祝辞
・新成人による感謝の言葉と、宣誓
といったものが一般的で、日本と比べるととても固いまじめなものです。
お祝いの内容は各学校によって異なり、学校内で行われるため基本的に制服での参加になります。
中国の学校は制服ではなくジャージ登校が一般的だそうで、そのジャージか制服で出席します。
学校によっては、自由な服装と決めているところや、イベントとして中国の伝統的な古代漢民族の衣装を身につけ、
昔の成人式の礼儀作法でお祝いをしたり、養老院へお年寄りをお見舞いに行って成人の心構えを学んだりすることもあります。
中国で新成人になるということは、
「中国人として自国の歴史を知り、中国人として自覚をもって行動し、中国人として国を愛する。」
という意味合いをもち、成人式は政治的な色味を帯びています。
現在の中国ではそれほど大々的に成人式を行ってはいませんが、昔はそうではありませんでした。
中国の成人式は、紀元前1000年の西周時代から17世紀の明時代まで数千年続く長い歴史のあるものです。
男性は、二十歳で成人の証である冠を着ける「冠礼(かんれい)」と言われる儀式が行われ、冠礼を受けたあと、結婚することが許されます。
女性は、十五歳になると髪を上げてかんざしをさす「笄礼(けいれい)」と呼ばれる儀式を行い、このあと結婚ができる成人として認められました。
この数千年続いた成人式は、清の時代に満族が禁止したことにより廃止されていましたが、
近年徐々に行われるようになり、現在のように学校ごとでの行事につながっていったようです。
世界の成人式 韓国の成人とは
韓国での成人の年齢は19歳です。
5月の第3月曜日が「成年の日(ソンニョネナル)」と制定されています。
日本では「成人の日」は祝日ですが、韓国ではこの日は祝日ではなく、また、式典などが行われることもほとんどありません。
韓国の新成人は、この日を仲の良い友人や恋人などの親しい仲間と過ごすことが多いようで、
カップルの場合は男性から女性へ、大人になったことを機に花やペアリングなどのプレゼントを渡すのも一般的です。
韓国でも、かつては「成年礼」という成人の儀式が行われていました。
今から約1100年前の高麗時代から行われていたと言われており、長い歴史の中で一度は中断されましたが、
これが起源で1973年に記念日として制定され、それが現在の「成年の日(ソンニョネナル)」になったようです。
現在でも、韓国の一部の地域ではイベントとして成人式が行われているそうで、式では男女ともに韓服をまとい、
男性は冠をかぶる儀式、女性は髪を結い、かんざしをさす儀式をします。
「大人になる儀式」としての成人式
ここからは、少しビックリな「大人になるため」の過酷な試練や儀式としての世界の成人式を紹介します。
世界の成人式 バヌアツ共和国の成人式
バヌアツ共和国のペンテコスト島に古くから伝わる成人の儀式はナゴールと呼ばれています。
この儀式に参加するのは、10歳~30歳前後の男性です。
ナゴールは、分かりやすく言うとバンジージャンプを行うことですが、私たちのイメージするバンジージャンプとは過酷さが桁違いです。
私たちの知っているアトラクションとしてのバンジージャンプは、伸縮性と強度のあるゴムのロープを使うことで
体への衝撃を減らしてありますが、このナゴールで使われるのは、バヌアツ共和国の主菜であるヤムイモのツルです。
このヤムイモのツルを足に巻きつけ、30メートルほどの木のやぐらから飛び降ります。
飛び降りた最下点での最高時速は70キロ近くになり、ヤムイモのツルには伸縮性が全く無いため、体への衝撃は相当なものです。
その衝撃は、非工業化世界で人間が経験する最大のG力として世界一の認定をギネスから受けているとか。
また、落下の衝撃で、ツルが切れてしまうこともあるそうです!!!
さらに、ルールとして、頭から地面に着けば成功と決められており、飛び降りる勇気がなかったり、
飛び降りることができても、頭から地面につかなかったりした場合は失敗とみなされます。
勇気を出して飛び降りたとしても、ルールをクリアできないと、翌年のもう一年を未成年として過ごさなければなりません。
世界の成人式 アマゾンの成人式
アマゾンのサテレ・マウェ族で行われる成人の儀式は、バレットアントグローブと呼ばれています。
この儀式は、アリが入った手袋に両手を入れて10分間耐える、というものです。
袋の中に大量に入れられているのは、パラポネア、通称バレットアントと呼ばれているアリで、
刺されると世界一痛く、銃に撃たれた時のような凄まじい痛みがはしると言われています。
成人を迎える男性は、儀式の前に自ら森の奥まで入り、バレットアントを捕まえ、お手製の手袋に縫い込むそうです。
そして、自ら作った大量の毒アリが入った手袋に両手を入れ、十分間もの間、耐え続けます。
蟻に噛まれて瀕死の状態になり、その苦しみに耐え抜いてこそ一人前であるとみなされるのです。
世界の成人式 マサイ族の成人式
ケニア南部からタンザニア北部一帯の先住民であるマサイ族では、2011年までライオンを狩ることが成人の儀式とされていました。
この儀式に参加するのは14歳~15歳の年頃の子どもです。
ライオンに勝つことで一人前の人間とみなされ、ライオンを恐れて狩りに出かけられないものは、一人前と認めてもらえません。
そのため、儀式をクリアしないと、村の会議に参加できず結婚もできなかったそうです。
しかし、長く続く狩猟によってライオンの数が絶滅危惧レベルまで減少してしまったことを受け、
2012年からは狩猟の代わりに、戦士を目指す少年たちによる技を競い合うマサイオリンピックが始まっています。
世界の成人式 ベラクルス州の成人式
メキシコ、ベラクルス州の18歳を迎えた男子は、フライングインディアンという成人の儀式を行います。
30m〜90mの高さがある塔の下で、正装でダンスをし、その後、順番に塔に登っていきます。
上まで到着したら、足首にロープを結んで逆さ吊りにされ、13回転します。
命綱などは一切なしの、足首に巻かれたロープだけで2~4人が同時にくるくると回り、とても見応えがある儀式です。
メキシコには高所恐怖症の人っていないのでしょうか・・・?
世界の成人式 ネイティブアメリカンの成人式
アメリカの先住民族、ネイティブアメリカンは、とても神聖な儀式とされるビジョンクエストを成人の儀式として行います。
ネイティブアメリカンは部族ごとに特有の文化を持っており、一部の部族ではビジョンクエストを終えたら成人とみなします。
ビジョンクエストは男子だけに行われるもので、不純を全て清められるスウェットロッジという儀式で心身を清めたあと、
ひとりで山の山頂や奥深い原生林に向かい、旅の長老が用意した神聖な場所で、メディスンホイールと呼ばれる
チョークチェリーの苗木を四方に立てた3畳ほどのスペースを作って結界を張り、その中で眠らず、断食をしながら4日間過ごします。
たったひとり、飲まず食わずの極限状態で自然に打ち込むことで、精霊からのメッセージを感じることができ、
それは、人生の目的や部族内での自分の役割などの、現世の自分の使命を見つけることに役立つとされています。
このビジョンクエストは、成人の通過儀礼としてだけでなく、人生の転機を迎えたときにも行われる儀式です。
ちなみに、これはネイティブアメリカンに限られることではなく、一般の人も体験することができます。
世界の成人式 エチオピアの成人式
エチオピアのハマル族の男子は、成人になった証として牛跳びという長年受け継がれてきた儀式を行います。
牛跳びは青年が大人になるための大切な儀式で、頭を丸坊主にして全身を炭とバターで黒く塗り、全裸になって
糞を背中に塗った牛を横一列に10~15頭並べ、その背中の上をぴょんぴょんと跳び、一度も落ちることなく3往復するものです。
牛の背中はごつごつしているので危なく、背中に糞を塗るので滑りやすいです。
とても危険な儀式ですが、失敗すると自分だけではなく一族の名誉にも関わってくるため、挑戦者は必死にクリアを目指します。
これには、家を背負った覚悟で挑み、大人としての責任を担うという意味が込められているようです。
また、この牛跳びの間、妹や親戚の女性にはムチ打ちの儀式が行われます。
これは牛跳びを行う少年への愛情表現と、女性としての誇りを表現するもので、このムチ打ちによってできた
傷跡は献身や愛着のシンボルとなり、打たれれば打たれるほど、そして傷が多ければ多いほど良い女とされます。
その後、エヴァンガディと呼ばれる踊りを夜通し踊り続け、やっと儀式が終わります。
この儀式を見事クリアするとマザと呼ばれる称号を手にすることができ、立派なハマル族の成人男性として認められます。
この他にも、パプアニューギニアでは素手でサメを捕獲したり、インドネシアのニアス島では
2メートルもある岩の跳び箱を飛び越えたりと、世界の成人式には過酷な儀式がたくさん存在します。
あなたはどこの国の成人式が気に入りましたか?
まとめ
世界の成人式は、お祝いの仕方やその考え方、行われる儀式も国や地域によって様々です。
海外の方々から見ると、新成人になったことを地域をあげ、一堂に介して盛大にお祝いする日本の文化は珍しいようです。
美しくきらびやかで特別感のあふれる日本の振袖・袴とともに、希少な文化である日本の成人式は世界の国々からとても注目されています。
世界の成人式の様子を知ることで、日本の成人式がより素敵に思えます。
これからも大切に守っていきたい伝統ですね。
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一生に一度の成人式。
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